写真をタップすると拡大・スライド可能

「初出場の19歳、塩貝健人がファーストプレーで示したもの」

【2024年4月10日 横浜F・マリノス 2-0 ガンバ大阪 日産スタジアム】

サポーターの心を掴んだファーストプレー

 

ファーストプレーで黒川圭介に食らいつく塩貝健人

 マリノスの1点リードで迎えた66分、ハリー・キューウェル監督は右サイドのリフレッシュを敢行。サイドバックの小池龍太とアタッカーの塩貝健人を投入した。背番号37の塩貝はこれが初出場。慶応大学在学中の19歳の彼は、2027年にマリノスへの加入が内定している特別指定選手だ。
 それまでヤン・マテウスが務めていた右ウイングの位置に入った塩貝は、いきなりスタジアムを盛り上げた。ボールを持ったガンバの左サイドバック・黒川圭介に勢いよく体を寄せると、マリノスサポーターが一気に沸く。塩貝はそのまま、後ろを向いてキープを試みた黒川に文字通り食らいついた。これは強引なプレーでファウルの判定となったが、初出場の若武者の食らいつく姿勢はまだ収まらなかった。ファウルとなったプレーに抗議する黒川を払いのけると、マリノス側からは喝采が、ガンバ側からはブーイングが飛んだ。

「ファーストプレーは熱くなりすぎました。でも、あれくらいやってもいいのかな、と思っています」
 塩貝は試合後、この場面をそう振り返った。
 先制点こそマリノスのものになったものの、この日は前半からガンバが攻撃力でマリノスを上回り、スコア以外はガンバのペースで試合が進んでいた。そんな試合で、途中出場かつ初出場の19歳はなぜいきなり気持ちの強さを示すことができたのだろうか。

自身が考えるファーストプレーの重要性

積極的に仕掛けた塩貝

 それは、日頃から自身が重視している部分によるものだった。

「いつも、ファーストプレーはちょっとファウル気味になってでも強く行くようにしています」

 その姿勢を示す名刺代わりのファーストプレーでサポーターの心を掴んだ塩貝は、その後もファーストプレーと変わらない強度でプレーを続けた。黒川やウェルトン、宇佐美貴史らが自身のサイドでボールを持つと素早く寄せて体を入れ、攻撃の場面では三浦弦太や中谷進之介を前にしても積極的に仕掛ける姿勢を貫いた。

 相手のペースで進み続ける1点リードの試合、という難しい状況において、失敗を恐れない積極的なプレーを見せる姿はサポーターが望むマリノスらしさでもあった。

「プロの舞台に立った以上、プロに相応しくないプレーはできません」

 そんなコメントも塩貝は残した。ファーストプレー以降もプレーからそれが伝わってきたからこそ、サポーターは塩貝の全てのプレーで盛り上がった。

 一度訪れたシュートチャンスこそものにできなかったものの、初登場で残したインパクトは大きなものとなった。この日スタジアムに足を運んだマリノスサポーターに、塩貝健人という存在はしっかりと刻み込まれただろう。

黒川との握手が物語るもの

試合後、黒川と握手を交わす塩貝

 試合終了のホイッスルを聞くと、背番号37はファーストプレーで激しくやり合った黒川のもとへ歩み寄った。硬い表情でやって来た19歳に、黒川は握手をしながら笑顔を浮かべた。ガンバのサイドバックのその表情は、初出場のファーストプレーはあれが正解だということを物語っていた。

 ただし、彼は決して満足していない。

「(自身のプレーの出来に)納得できていません」

 ハッキリそう口にした塩貝は、今後について「ファンの心を掴みたいし、応援される人間になりたいです」と語った。

 この日プレー姿勢で観る者の心を掴んだ彼ならば、アタッカーとして結果で心を鷲掴みする日も遠くないだろう。

(関連写真もご覧ください)

黒川と競り合う塩貝

ウェルトンと競り合う塩貝

宇佐美貴史と競り合う塩貝

中谷進之介に対して仕掛ける塩貝

勢いのある走りを見せた

黒川との握手

試合後、硬い表情を続けていた塩貝だったが、宮市亮に労われるとようやく笑顔を見せた