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「オランダに逆転勝利をもたらした2人の統率者」

【2024年6月16日 ポーランド 1-2 オランダ ハンブルク・フォルクスパルクシュタディオン】

異なる4-3-3

83分にボウト・ベグホルストが逆転ゴールを決め、オランダが勝利した

 簡単な試合ではなかった。

 先制点を奪われたオランダは、コーディ・ガクポが個で同点ゴールを奪ったものの、その後の猛攻を実らせることができないでいた。現代型の司令塔、フレンキー・デ・ヨングを負傷で欠いたチームはボールを持つものの、チームとして相手の守備を崩すには至らず。フィニッシュの場面はウインガーの個に依存することとなり、ポーランドのGK、ヴォイチェフ・シュチェスニーに彼らのシュートを防がれるとそれ以上のパターンを示せなかった。

 ロナルド・クーマン監督率いるチームは、最前線に大型FWを配したオランダお馴染みの4-3-3の戦い方に拘ることなく試合に挑んでいるが、この日のポーランドに対してはそのメリットを発揮できずにいた。

交代策での変貌

ロナルド・クーマン監督

 そんな難しい試合に逆転勝利をもたらしたのは、ピッチ外とピッチ内の統率者だった。

 1-1からスコアを動かせないチームに対し、クーマン監督は62分にジョルジニオ・ワイナルドゥムとドニエル・マレンを投入。しかし、変化は起きなかった。

 すると81分、オランダは再び選手交代。ガクポとメンフィス・デパイを下げ、ジェレミー・フリンポンとボウト・ベグホルストを送り出した。この2回の交代で、オランダは前線の3人が総入れ替えになり、プレースタイルも大きく変わった。

 両翼は、ゴールに向かって斜めに進みシュートを放つ動きから、縦に突き進む動きへと変わり、サイドバックのネイサン・アケとデンゼル・ダンフリースの駆け上がりも効果的なものとなった。そして中央は、動いてボールを捌くメンフィス・デパイから197cmの長身で構えるベグホルストへ。チームは「いわゆるオランダらしい4-3-3」の戦い方へとシフトした。

 交代直後、いきなりフリンポンが縦へのスピードを見せてゴールに迫り、一気にオランダが活気づいた。そして81分の交代から僅か2分、ベグホルストがネットを揺らし逆転に成功。単なる選手交代だけでなく、それによってにスタイルを変えた采配が的中した。

 今後の試合でも4-3-3の複数のあり方や、4-3-3以外の形を見せるであろう今大会のオランダ代表。選手の特性によってスタイルを変えることができるチームは、クーマン監督の采配によって毎試合その強みを最大限に発揮することができるだろうか。

絶対的なリーダー フィルジル・ファン・ダイク

チームを鼓舞するフィルジル・ファン・ダイク

 そのためにはピッチ内の統率者が不可欠だが、幸いなことにオランダにはその役割を完遂する絶対的なリーダーがいる。試合途中で流れが変わろうとも、上手くいかない時間が続こうとも、攻撃のスタイルが変わろうとも、決して変わらぬ強烈な統率力でチームをまとめ、1つの方向を向かせる選手がピッチ内にいる。キャプテンマークを巻くDF、フィルジル・ファン・ダイクだ。

 世界最高のCBの一人であるファン・ダイクは、所属するリバプールにおいてもオランダ代表においても絶対的な選手だ。CBとして個で相手を上回るだけでなく、DFラインのみならずチームを統率する眼と声、そして迫力を持ち合わせている。

 この日もことあるごとに指示を出し、檄を飛ばした。試合開始からハーフタイム、そして試合終了までチームの至る部分に気を配り続けたキャプテンは、タイムアップのホイッスルを聞くとようやく安堵の表情を見せた。

 変化と不変の両輪。ピッチの外と内で2人の統率者がいるオランダ代表は、変化をしても惑うことなく勝ち点3を奪い取り、グループリーグ突破に大きく前進した。この先の試合でも、選手交代で戦い方を変えることができる強みをファン・ダイクの統率力が際立たせるだろう。

(関連写真もご覧ください)

試合前、ポーランドのミハウ・プロビエシュ監督と握手を交わすクーマン監督

同点ゴールを決めたガクポを迎えるクーマン監督

81分に投入されたフリンポン

指示を出しながらボールを運ぶファン・ダイク

大きなジェスチャーで指示を出す

相手の顔を見て、わかりやすく感情とともに伝える

試合終了のホイッスルを聞き安堵するファン・ダイク