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テロリズムとフットボール

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Football against terrorism

文・写真:原 悦生
Text & Photo: Etsuo Hara

 

11月13日の夜、パリで起こった同時多発テロで劇場やレストランだけでなく、サッカー場が標的の一つになった。

スタット・ド・フランスで行われていたフランスとドイツの親善試合中にスタジアムの外で数回の爆発があり、入場ゲートでは自爆テロが起きて死傷者が出た。プレー中の選手は爆発音に反応したが、観客の安全の確保のため、試合は最後まで行われて、試合終了後にピッチを解放した。

このテロを受けて翌週火曜日の国際試合ベルギー-スペイン、ドイツ-オランダなどが中止になった。

パリでは当局の作戦が実行されて、サンドニ地区で銃撃戦の末、何人かを射殺逮捕したというが根源が経たれたわけではない。

一時閉鎖されたパリの劇場や博物館、美術館が、数日で日常を取り戻すためにオープンした。

ロンドンのウェンブレーでは17日、イングランド-フランスの親善試合をFAが「連帯と敬意を示す機会」として予定通り開催して、フランス国歌が合唱された。

インターナショナル・ウィークが明けたフランスリーグは開催に強い意思を見せて、内務省からの通達でアウェイ・サポーターの入場を禁止したが、日程通り試合開催に踏み切った。

テロ後の世界的なビッグ・イベントの一つクラシコが、11月21日にマドリードで行われた。

マドリード市は警察との連携を見せて大規模な2517人のセキュリティ体制で臨むことで、レアル・マドリード対バルセロナのクラシコの予定通りの開催を決めた。土曜日の18時15分という明るい時間でのキックオフは警備に幸いした。テレビのニュースや新聞でファンに「チケット、身分証明書の提示と2時間前までに来るように」と早め来場を呼び掛けたため、当日は混乱なく試合は無事行われた。

試合に先立ち、サンチャゴ・ベルナベウにはフランス国旗が掲げられて、1分間の黙とうがテロの犠牲者にささげられた。

警備の体制や交通規制は大幅に異なるが、過去には2013年の国内カップ戦決勝で2500人、2010年のUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)決勝では4000人を動員した。普段も1200人から1500人規模の警備体制は敷いているため、見た目にはそれほど変わらなかった。マンホールのチェックや爆発物探知犬が目についた程度だった。

マドリードでは2004年に3月11日(11-M)のアトーチャ駅などで列車爆破テロが起きている。

2002年5月のUCL準決勝前には、サンチャゴ・ベルナベウ近くのビルの駐車場で爆破事件が起きた。また、2004年12月には、リーガレアル・ソシエダとの試合中の爆破予告電話で試合が打ち切られて7万人が避難する事態にも直面している。その時は結果的に、爆発物は発見されなかった。

大がかりな警備に慣れているとは言っても、生活圏に位置するスタジアムを完全に隔離することは困難だ。サンチャゴ・ベルナベウのようなビシネス街に位置するスタジアムの場合、郊外に独立して建てられたミュンヘンのアリアンツ・アレナとは状況が大きく異なる。

事件を受けたUEFAは2016年夏、フランスでのパリ、サンドニを含むEURO2016を予定通り開催することを改めてアナウンスし、11月24日と25日に行われたUCLのグループリーグ第5節では、欧州各会場で特別の交通規制、近くの駐車場および駐輪場の閉鎖、厳重なボディーチェックと荷物検査が行われて、サンドイッチの中身までもチェックした。

バルセロナのカンプノウでは開門を3時間前に早めて入場の混乱を避けた。

だが、ファンへのアナウンスが不十分だったアトレティコ・マドリードのビセンテ・カルデロンでは、ボディーチェックに時間を擁して入場がキックオフに間に合わないファンが大勢いた。

UEFAは今後もセキュリティの強化をクラブと市警察に要請して、観客の安全を優先する。テロのターゲットが無差別というのは厄介なものだが、サッカーも日常の生活の一部なので、毎日の食事と同様に、試合は続けられる。

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