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アトレティコの夢

Dreams of Atletico -UEFA Champions League Final in Lisbon-

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文・写真:原 悦生
Text & Photo: Etsuo Hara

 

リスボンでのUEFAチャンピオンズリーグ決勝は、マドリード・ダービーになった。ヨーロッパ・チャンピオンの座をアトレティコ・マドリードとレアル・マドリードが争う。

ヨーロッパ・カップの59年の歴史の中で、同じ国のクラブが決勝にいたことは5度あるが、同じ街のクラブが決勝で当たるのは初めてだ。レアルにとっては13回目の決勝で、10回目の優勝を狙う戦いになる。

そして、アトレティコが優勝すれば、名誉ある23番目のクラブになる。

レアルが裕福なホワイトカラーの象徴なら、アトレティコはブルーカラーの労働者の生きる力だ。

私がマドリードでよく通っているバルのオーナーは熱烈なアトレティコの同士だ。レアルが負けただけでご機嫌なのに、今シーズンのアトレティコの奮闘ぶりには、つい表情が緩んでしまう。

「Los Colchoneros」という親しみを込めた呼び名はマットレス作りの職人という意味だ。
アトレティコのユニフォームの赤と白のストライプは、昔ながらのスペインのベッドのマットの柄をイメージしたものだ。

監督のディエゴ・シメオネは「働け、働け、働け!情熱だ!」と叫ぶ。
レアル・マドリードやバルセロナという裕福な巨人たちを相手に、今シーズンは互角か、それ以上の結果を残して優勝した。
ここ4シーズンで獲得した2つのヨーロッパリーグを含むタイトルは6つで、これは同時期のレアルの4つを超えている。

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42年も待ったチャンピオンズリーグ・セミファイナルで、しかもアウェイでチェルシーに完勝して、決勝にたどり着いた。
そこで待っていたのは、17年ぶりに国王杯で下したレアルだった。

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ここに古い記録がある。
アトレティコとレアルがヨーロッパのステージで戦うのは、なんと1959年のヨーロッパ・チャンピオンズ・クラブ・カップの準決勝以来だ。

この準決勝は3試合行われた。
1959年4月23日の第1戦はホームのレアルが2-1でアトレティコに勝った。
5月7日の第2戦はアトレティコが1-0で勝って、2試合合計2-2で並んだ。

今のルールならアウェイゴールでアトレティコの決勝進出だが、当時のルールで5月13日に中立地サラゴサで再試合が行われた。
レアルがディ・ステファノが先制すると、アトレティコはすぐにコラールのゴールで追いついた。だが、前半終了3分前にプスケスが決勝点となるゴールを決めた。

ロンドンのスタンフォードブリッジでアトレティコがチェルシーに勝った夜、帰りにバスで乗り合わせた向かいの座席の青年は控えめにアトレティコのスカーフを巻いていた。
静かで礼儀正しかったが、その表情にはうれしさがにじみ出ていた。ケンブリッジに通っているという。

2014年5月24日、リスボン。

1903年に、レアルより1年後に、アスレチック・ビルバオのマドリード支部のような形で、バスクの学生たちによって設立されたクラブは、苦難の時を綱渡りで乗り越えて、今、同じ街のライバルとヨーロッパの頂点を競う。

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結果が何であれ、「人々」は誇りを胸に「俺たちのアトレティ」とともに戦う。

 

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